【GR】新中山トンネル工事で採用いただいた「トンネル向け長距離無線LAN」のご紹介!

こんにちは!エコモット札幌営業所 新人の西田です。
本日は私がご導入に立ち会ったトンネル向け無線ソリューションについてご紹介します。

トンネル工事をはじめとした現場でのリスク管理は、年々高度な仕組みが登場し、活況を呈しています。
そんな中でもIoTやAIなどのデジタルテクノロジーで、ヒューマンエラーを最小限に抑えるソリューションの役割も大きくなってきました。

しかし、それらのソリューションの多くは、それなりに高速な通信環境を前提としたものが多いのが実情……。
そのため、都市部はともかく、山間部などの不感地帯(圏外エリア)においては、デジタルのソリューションそのものの導入ハードルが急に高くなってしまうという課題が存在しました。

そのような課題を解決するのが、今回のトンネル向け無線ソリューションになります!
弊社としても、トンネル工事に対して本格的な無線ソリューションを提供させていただくのは初めての試みでした。
いつもと異なる環境に対してどのように現場の課題をクリアしたのか…?ぜひご一読いただけましたら幸いです!

今回のご紹介にあたっては実際にご導入いただいたお客様全面協力のもと、皆様にお届けします。
ご導入いただいたお客様は、100年近くにもなる長い歴史を持つ道南の建設会社である
株式会社松本組様。現場は「一般国道227号 厚沢部町外 新中山トンネル工事」です。

代表的な不感地帯対策

弊社では、ネットワークカメラやデータロガーをはじめとしたパッケージ品のほかに、不感地帯(圏外エリア)における通信インフラの構築にも力を入れています。
代表的なソリューションを2つ挙げてみましょう。

その1 衛星通信

(目立つ巨大アンテナ。雪が積もったら払い落としてもらっています)

このように大型のアンテナを地面に据え置きガッチリ固定。
地上から約36,000㎞離れた静止衛星を補足して、常に安定した通信を行うことができます。
上り1Mbps・下り4Mbpsの速度で通信できるためYouTubeだって見れちゃいます。

こうして現場に通信環境を整備することで遠隔臨場も可能です!

(衛星通信システムを敷設後、遠隔臨場システム【Gリポート】を手に接続試験する上司)

弊社の衛星通信ソリューションは、定められた方角の上空が開けてあれば、沖縄を除く日本全国どこでも設置することが可能。
カメラ監視・計測だけでなく遠隔臨場を行われるお客様も増えてきました。

↓遠隔臨場システム「Gリポート」はこちら
いますぐ詳細をみる

その2 長距離無線LANデバイスを活用したインフラ構築

(分かりにくいかもしれませんね。無線アンテナを中継させて電波を圏内→圏外へ㎞単位で引っ張ってくるイメージです)

見た目からは分かりにくいですが皆様のご家庭にあるWi-Fiルーター。あれのすごいやつとお考え下さい。
この長距離無線LANは見通しが良くないと活用できないという制約があります。
しかし、通信速度は衛星通信より断然早く、映像データなどの大容量通信であってもサクサク使えるメリットがあります。

圏内エリアがあと少しの距離に…、というシーンではコスト的にもこちらがおすすめです。

↓長距離無線LANはこちら
いますぐ詳細をみる

トンネルではどうか


さて、ここからが本題です!
トンネルにおいては、どういう手法で通信環境を構築できるのか。
ご存知のとおり、坑内では携帯電話はつながりません。衛星通信はなんといっても空が開けていませんので物理的に不可能です。
では上述した長距離無線LANはどうかというと…

ダメなんです……。

一般的な無線デバイスでは、期待通りのパフォーマンスを発揮することができません。
読んでくださっている方の中には、トンネル現場で無線化したけれど思ったように通信ができなかった、という経験をされた方がもしかしたらいらっしゃるのではないでしょうか?

トンネル坑内という壁

トンネル内では、周囲を囲まれた閉鎖空間という構造上、また重機や鋼構造物により見通しが確保できなくなることから電波干渉を受けやすくなり、無線通信がうまく届かなくなるからです。

電波は、壁などにぶつかると反射する性質があります。これをマルチパスといいます。
まっすぐ飛ぶ(直接波)だけでなく反射しながら飛んだりする(反射波)ため、無線経路は一つではありません。
まっすぐ飛ぶ電波と反射しながら飛んでいく電波とでは、受信側アンテナに届く電波の到着時間に差が生まれます。

その差に引きずられて届く電波の形(位相といいます)もズレて届くため、データがスムーズに受け取れないということにつながり、結果的に電波強度・通信速度が減衰するのです。これをフェージングといいます。

トンネルという巨大な筒状構造物では、これらの現象が必然的に発生するため、届く・届かないということは無線距離の大小だけでは判断できないのです。

たとえば
「当社製品の無線飛距離は最大〇〇km!」
こういう触れ込みの無線デバイスを、いざトンネル坑内で使ってみたら、あまり通信できなかった。

これは不具合でもなんでもなくて、起こるべくして起こっている現象なんですね。
そのため、多くのトンネル現場では有線が用いられるのです。

ただし、確実性こそ高い有線ですがトンネル内は狭くて重機の往来も激しいため、工程に応じて盛替え作業が必要ですし、断線リスクなどの問題も避けられません。

私達が提案するトンネル向け無線ソリューション

そんな中で弊社は有線にも劣らない通信環境を無線で構築することができます。
それがこちら!

あれ?と思ったでしょうか。
そうですね。さきほど無線はダメだと申し上げましたから。ではなぜまた無線なのか。
それは無線デバイスの技術的な性能にあります。こちらは無線デバイスの外観。

のっぺりな見た目。軽いので片手で持てます。
これの何がすごいのかというと、端折ったご説明となりますがイメージはこうです。

一般的な長距離無線デバイスを使った場合

直接波と反射波が入り乱れながら無線が飛ぶことにより(マルチパス)、上記の物理現象が起因となり、結果的に電波到着時間がズレてスループット(※)が下がります。

※スループットとは、1秒間に伝送できるデータ量のことです。ここでは通信速度のことだと思ってください。

エコモットの長距離無線デバイスの場合

無線の送受信で懸念となる反射波をカットすることができるため、トンネル内であっても数㎞もの距離を問題なく通信させることができるのです。(ちなみに見通しが良い場合の無線最大距離は15㎞です。)
この技術がトンネル内で無線化を可能とする核となっています。

トンネル向け無線ソリューションの仕組み

本ソリューションでできることは大きく以下の二つです。

①トンネル内部全域にネットワーク環境を無線で構築 

②トンネル内部の作業環境をデータと映像で遠隔監視

①トンネル内部全域にネットワーク環境を無線で構築

(左:親局 右:これから坑内に運び込む子局本体)

上図の一番右側にある親機は坑口に設置しているとします。無論、インターネットができる環境です。
そして坑内にはWi-Fiエリアを各所に配置します。
そこから4.9GHz帯の電波を坑内の子機に向かって飛ばし、それを受け取った子機のネットワークからWi-Fiエリアを構築。これで坑内でも通信ができるようになります。

続いて以下の写真をご覧ください。盤の中にあるQRコードが見えますでしょうか。

これは皆様のスマホとWi-Fiルーターを簡単に接続するためのバーコードです。
スマートフォンのカメラでピッと読み取るだけでネットができるようになり、いちいちパスワードを入力する手間がかかりません。
これで坑内でのインターネットはもちろん、遠隔臨場や緊急時の連絡手段もバッチリですね!

②トンネル内部の作業環境をデータと映像で遠隔監視

これでトンネル内にネットワーク環境が構築できました。さて次はいよいよデータ収集・遠隔監視です。
下図をご覧ください。まず、酸素濃度計・温湿度計・粉塵濃度計を切羽付近に設置します。


異常値を検出すると、三色積層灯による段階的な警告やメール通知を行うことができます。

デジタルサイネージで坑内をモニタリング

坑内のデータはクラウドサーバだけでなく、坑口付近に設置した大型のデジタルサイネージでもリアルタイムに表示されます。

55インチの屋外用デジタルサイネージ。さすがにインパクトがありますね!
今回は複数台のカメラがあるので画面を4分割表示ができるようにしました。

画面が大きく直射日光が当たっても明るさが1500cd(カンデラ)あるので見やすいです。
発注者をはじめ新規入場者への説明、見学会の対応などにきっとご活用いただけることでしょう。

さらに工夫を凝らした点として、皆様のスマートフォンをサイネージのリモコンにすることができます。
画面の切替え・拡大などが簡単にできるメリットがあるほか、リモコンが紛失し操作ができないという心配もありません。


現場から離れた現場事務所やタブレットからでも同様の画面を映すことができます。

おわりに

複雑なシステムに見えたかもしれませんが、有線に比べると無線の快適さは比較になりません。
配線の取り回しや断線リスク、盛替え作業から機器の移設まで、無線と有線ではかかる手間が段違いです。

ちなみにサイネージの設置ですが堅牢なつくりになっている反面、重さが110kgほどありまして…、箱から出すだけでもひと苦労でした(笑)。
設置の際にはフォークリフト(とオペさん)にご協力いただきました!この場を借りてお礼を申し上げます。

機器を設置した私たちはサイネージのおかげですっかり筋肉痛になりましたが、お客様の喜ぶ姿を見ることができて疲れも吹き飛びました!

今回のソリューションはトンネル用でしたが、もともとはお客様のこんなことがしたい!という想いから生まれています。
これらシステムの一部だけでいいから検討してみたい、というご要望も大歓迎です。

私たちと一緒に新しいことに挑戦していきましょう!お客様の想いをきっと形にしてみせます。
ご興味をお持ちの際には、お気軽にお問い合せください!

今回ご導入いただいた株式会社松本組様のサイトはこちら(外部ページ)

 

 

お問い合わせはこちら

新規CTA