生成AI時代の新規事業戦略【続編】
― “弱み” の希薄化について考える ―


AX研究室の庄内です。
巷ではAIエージェントの話題が席巻し、企業ではDXの手段としていかに活用していくか、個人ではどのように雑務をなくして効率化していくかについて検討されていることと思います。
このような生成AI時代における現状をどのようにとらえるとよいのかというを話をしていきたいと思います。


1. 前回のおさらい

3 月 31 日公開の記事では、生成 AIの普及で VRIO の「希少性 (Rarity)」が急速に低下し、競争優位の源泉が 独自データと統合運用力 へシフトすることを指摘しました。また、これらを持続させるためにはガバナンスと学習パイプラインを組織的に回す体制が不可欠だ、という課題感を共有しました。


2. ローカル LLM × バイブコーディングが起こした変化

今年に入り、バイブコーディングという開発スタイルが登場しました。ペアプロの“相方”が人ではなく LLM(大規模言語モデル)になる──そんな感覚です。

個人的には、Anthropic社のClaudeで、MCPを使うスタイルでやっていましたが、ローカル生成AIの性能も上がってきたのを受け、調査を兼ね

社内ではディスコン直前の DGX-Stationollama を載せ、

  • Gemma 3(Google)
  • DeepSeek-R1(DeepSeek)

という 2 つのオープンモデルを常駐させ、これを VS Code + Continue で呼び出すことで、APIを利用せずに ローカル・バイブコーディング環境を実現しました。

設定が済めば、自然言語で要件をつぶやく → コードが生成される → 即実行・修正、というサイクルを数分で回せます。

試しに Pac-Man 風ゲームを作ったところ、昔なら 1 〜 2 日かかった“企画→MVP”が2時間弱で完了。しかも LLM が迷路生成アルゴリズムやテストコードまで提案してくれたので、私はレベルデザインと微調整だけに専念できました。

この体験を通じてはっきりしたのは、
**「できるか・できないか」より「どこまで自動でやらせるか」**
がボトルネックになる時代だということです。


3. 生成AI時代の現状をSWOT/TOWS分析する

※SWOT は「強み (S)・弱み (W)・機会 (O)・脅威 (T)」を棚卸しするフレームワーク。
※TOWS はその4象限を縦横に掛け合わせ、SO/ST/WO/WT の4タイプの戦略へ落とし込む行列です。

3-1 “弱み” (W) が希薄化するインパクト

生成 AIとAIエージェントの活用環境が整うと、従来は採用や長期教育でしか埋められなかったスキルギャップが即日補完できます。つまり、これまで中期計画案件に追いやられていた WO 戦略(弱み × 機会)に該当していたタスクの多くがなくなる、もしくは SO 戦略(強み × 機会)へ一気に繰り上がるわけです。

従来の解決策 生成AI時代の解決策
教育・採用:半年〜年単位 LLM補完:数時間〜数日
外注で人月を確保 AIエージェント/バイブコーディングで内製プロト

3-2 TOWS 行列の読み替え

  • SO:独自データやドメイン知識を活かしつつ AI を高速実装して攻める
  • ST:強みを武器に規制・競合リスクを回避
  • WO ⇒ SO:弱みが AI で薄まったら即座に攻めへ転じる
  • WT:LLM を使っても埋められない障壁は早期に可視化し、撤退ラインを引く

4. 組織とプロジェクトをどう変えるか

  1. 情シスを「AIプラットフォームのSRE」に再定義

* GPUクラスタ運用、モデル更新、セキュリティゲートを一手に引き受ける
2. ビジネス部門が LLM プロト主導
* AIエージェント/バイブコーディングで UI モックや 機能部品等 を作り、本番実装部分だけ開発チームへ依頼
3. 人材要件の刷新
* 「万能エンジニア」より ドメイン特化 × AI リテラシー を重視


5. まとめ

  • AIエージェント群の利活用
    ** バイブコーディングは開発速度だけでなく **戦略設計のスピードをも押し上げる
  • 現状認識の鮮度をキープ
    ** “弱み”が 即日で薄まる ため、WO 戦略を SO に前倒しできる
    ** 生成AIの進化が激しく不安定。現状分析の頻度を上げることも重要。

Pac-Man 風ゲームの GitHub: https://github.com/Ecomott-DataAnalytics/like_pman
ぜひ動かしてみて、バイブコーディングの威力を体感してください!