【GR】コンクリートの豆知識 vol.3 ~コンクリートの劣化原因と対策~

こんにちは!エコモットの奈良です!
今年は、北海道や日本海側の地域では記録的な大雪に見舞われ大変な日々が続いておりますが、春まであともう少しの辛抱です。
そのような厳しい気候条件にさらされているコンクリートではありますが、前回のブログでは寒冷地のコンクリートの劣化とその原因についてお伝えしました。

【GR】コンクリートの豆知識 vol.2 ~冬はコンクリートに厳しい季節です~

今回はその他の劣化とその原因についてお話していきましょう。

コンクリートの劣化原因

まず、コンクリート片の落下などの事故があると、施工不良やメンテナンス不足が取りざたされますが、コンクリートの劣化に対する補修・補強などの対策不足が原因のひとつだったりします。
前回もお伝えした通り、コンクリート構造物の寿命は永遠ではありません。
年月とともに老朽化します。いわゆる経年劣化ですね。
ではどのように劣化するのでしょうか。

コンクリートの中性化

コンクリートはアルカリ性だということは、前回もお伝えしましたが、長い間外気にさらされるとそのアルカリ性が弱くなります。

ところで、学生時代に理科の授業で行った中和反応の実験を覚えておりますでしょうか?
BTB溶液に水酸化ナトリウム(アルカリ性)を入れると青色に変化します。それに塩酸(酸性)を少しずつ入れると、緑色(中性)になり、さらに入れると黄色(酸性)になります。


 
コンクリートも少しずつ酸性にさらされるとアルカリ性が弱まり、塩害と同様に鉄筋の不動態被膜が破壊され、鉄筋の腐食が始まります。

これは大気中の二酸化炭素により起こります。
二酸化炭素(CO2)がコンクリート表面の細かい隙間からコンクリート内部に侵入すると、コンクリート(Ca(OH)2)のアルカリ成分(OH+)が水(H2O)と炭酸化合物(CaCO3)に変化し、コンクリート内のpHが低下します。これがコンクリートの中性化です。

このコンクリートの中性化により鉄筋の腐食が進行すると腐食箇所の体積が膨張し、その膨張圧によってコンクリートにひび割れが発生します。そのひび割れを通じて水分や酸素などの供給が容易になり、さらに鉄筋腐食が促進され、コンクリートの劣化が始まります。

 
ところで、大気中の二酸化炭素の他に酸性雨も劣化の要因の一つになります。
コンクリート製のガード下やトンネルなどを通った時に、氷柱のようなものがぶら下がっているのを見たことはありませんか?
これは、酸性雨がコンクリートを溶かしているのが原因です。

この仕組みは鍾乳洞と同じ原理です。ちなみに鍾乳洞発生の原理は以下の通りです。
石灰質の地盤に二酸化炭素を含んだ雨が降ることで石灰質が侵食され、その際に生成された水が長い年月をかけて石灰質の地盤を侵食します。その水が下方に移動することで、上方に空洞ができます。
これが最初の洞窟になります。
その後も雨などで浸食された石灰質を溶かした水が長い年月をかけて、石灰質の氷柱になり、現在の鍾乳洞が出来上がります。

自然界では美しく神秘的な鍾乳洞も、コンクリート劣化と仕組み的には同じであることを考えると、なんとも複雑ですね。

アルカリシリカ反応(ASR)

以前はアルカリ骨材反応とも言われておりましたが、現在はこの呼び名が一般的です。
コンクリート製造時にシリカを含む骨材がある場合、そのシリカとコンクリートのアルカリ成分が反応して、アルカリシリカゲルが生成されます。
アルカリシリカゲルは除湿剤や吸湿剤で使われますが、周りの水分を吸収する性質があり、ここではコンクリート内部の水分を吸収し膨張します。
この作用によりコンクリートにひび割れが生じ、コンクリート構造物の劣化や破損の原因となります。

日本コンクリート工学会のサイトより、「わが国でも1950 年頃から調査報告はあるが、1980 年代に入ってアルカリ骨材反応による早期劣化が顕在化した。」とありましたが、現在は使用する骨材に原因となるものが含まれていないことを確認するようになったため、コンクリートのアルカリシリカ反応(ASR)はかなり少なくなっているようです。

劣化したコンクリート構造物の再生

今回と前回でコンクリートの劣化についてお伝えしましたが、劣化要因を取り除き補修・補強する方法もあります。
SDGsが叫ばれる前から、コンクリート構造物の世界では、延命化や長寿命化などコンクリートの持続可能性を高める取り組みは進んでいます。

塩害を受けたものには脱塩工法で進行を止めたり、中性化したものには再アルカリ化工法でアルカリ性を取り戻したります。
また、劣化により強度が不足したものについては、劣化部分を取り除き打設し直したり、別な素材と組み合わせることで強度を確保することもしています。

もちろん劣化が進み過ぎていた場合は、コンクリートを打ち直ししますが、その際にも鉄筋を残し、その鉄筋を補強して利用します。

コンクリートは硬くて冷たい奴じゃない

3回にわたり、コンクリートの歴史や構造についてお話してきました。
前回に引き続き、コンクリートの弱いところを書き連ねましたが、川を渡るための橋だったり、山を貫くトンネルだったり、地上数百メートルのビルだったり、波の勢いを吸収するための消波ブロックだったり…。
と、数え出したらきりがないほど、私たちが便利で快適に生活できるために、あらゆる場面でコンクリートはさまざまな外敵にさらされながらも、頑張ってくれています!

そしてそのコンクリート構造物を作るために、セメント・骨材のメーカーや生コン製造プラント工場業者、打設の際の型枠工事業者や鉄筋工事業者、さらに品質管理をするゼネコンや強度計算をするコンサルタントなど、さまざまな人を介してコンクリートは出来上がり、安全性を保たれています。

私たちの日常生活の中で当たり前に存在するコンクリートを、少しだけ優しい目で見ていただけると嬉しいです。

 
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参考文献:
公益社団法人日本コンクリート工学会 アルカリ骨材反応 https://www.jci-net.or.jp/j/public/kiso/ASR.html

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