財務経理の実務のお話~17ヶ月変則決算

みなさんこんにちは!管理部の工藤です。

 

昨年に続き今年もアドベントカレンダーに参加してます。前回は人事係の話を書いていました。今年もこの時期は新卒採用が本格化してきて、採用の季節が来たな~と感じているところです。

 

アドベントカレンダーではエコモット社員の普段見えない仕事ぶりとかが知れるので私も楽しんでます!

管理部では人事だけではなく財務経理もやっています。人事と違って財務経理の話は込み入った話が多く(地味なので)ブログにかけるようなトピックは少ないのですが、ちょうどいい題材があったので今回は財務経理の実務的な話を書きたいと思います。

財務経理の具体的な実務の話ですので、カタメの内容になるのはご容赦ください!

 

事業年度を変更しました

当社は今年6月に開催した株主総会で事業年度を変更しました。

「毎年4月1日から翌年3月31日までの1年」から「毎年9月1日から翌年8月31日までの1年」に変更しています。

事業年度というのは会社の決算期間のことで、1年以内であればどの期間でも自由に定めることが出来ます。

(事業年度を変更した理由は代表の入澤が以前ブログでも語っています!)

 

17ヶ月の変則決算

ここでまず論点になるのが、変更した年度の決算期間をどうするか?です。

会社計算規則では原則1年と定めているので原則どおりにいくと、2019年4月~2019年8月の5ヶ月間で一旦事業年度を区切り、2019年9月~2020年8月までの1年間となります。他社事例ではこのケースが圧倒的に多いです。

しかし、当社では諸所の事情により2019年4月~2020年8月までの17ヶ月決算としました。会社計算規則では変更した年度に限っては最長18ヶ月までの事業年度の伸長を認めていて、珍しいケースではありますが17ヶ月もアリとされています。

 

会計実務者あるある

17ヶ月の変則決算にすると、それに付随して検討しなければいけないことがいくつか出てきます。こういう通常とは違う動きがあるときは検討事項に漏れがないか関係当局や顧問弁護士、監査法人等と事前に協議をしていきます。たまに見解が分かれることもあったりするので、早めに関係者と協議しておくのは大切ですね。

また、会計実務者あるあるですが、こういう時はよく他社事例をみます。当社ではプロネクサス社のeolというデータベース検索サービスを使っています。キーワード検索ができるので「事業年度の変更」とかで検索し、ヒットした会社をいくつかピックアップして関連開示を見に行くという感じです。余談ですが、eolはタイムアウトがあるのでたまに再ログインを求められます。タイムアウトがなければもっと快適なのに!といつも思ってます。

 

役員の任期はどうなる?

実際に事業年度の変更にあたり当社で検討したことをいくつかご紹介します。

当社は定款で「取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。」と定めています。

つまり、前年度の定時総会(2018年6月)に取締役を選任していた場合、事業年度を変更していなければ2020年6月開催の定時株主総会までが任期となります。ですが、事業年度を変更したことにより2020年度の定時総会は2020年11月に伸びてしまっています。

ここで、取締役の任期を2020年11月まで2年を超過しても良いかどうか?という問題がでてきます。

事業年度を変更した場合のみ取締役の任期を伸ばすことを定款の附則等に記載することも考えられます。ですが、会社法では、公開会社の取締役の任期は最長2年と定めています。短縮することは認めていますが2年を超えることは認められていません。

会社法で認められていないことを定款に記載しても認められないよね。ここは会社法の趣旨を踏まえましょう、ということで2019年6月の定時株主総会で取締役の選任決議をし、2020年11月の定時総会でも選任決議をする。ということにしました(他社事例では2年を超えているケースも・・・)。

 

会計監査人の再任は?

同様に、会計監査人の任期についても論点があります。

定款で「会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。」と定めています。

1年以内ってことは17ヶ月決算だと途中で任期が終わっちゃう?!と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、事業年度の途中で会計監査人の任期が終わるというのは現実的ではありません。法務局の見解では「今回のケースでは事業年度変更時点で会計監査人に当初からその事業年度の終了までを任せていることになるから、変更後の事業年度が選任後1年以内に終了しないときでも当該事業年度に関する定時株主総会の終結の時に退任する。」とのことです。

 

税務申告

次に、税務申告です。税務申告は「事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内」と定められています。では17ヶ月になった場合はどうなるか?です。

税務上の事業年度は原則として会社が定めた会計期間と同一とされていますが、会計期間が1年を超える場合は1年以内とされているため、税務申告は2019年4月~2020年3月までの一年分と2020年4月~2020年8月までの5ヶ月分で2回必要になります。

それほど大きな影響がある話ではないですが、税務申告システムや税効果会計などの経理資料にどのような影響があるか確認が必要になりますね。

 

有価証券報告書

最後に、有価証券報告書についてです。

上場会社は会社の財政状態、経営成績等を投資者に適時に開示するために、3ヶ月毎に四半期報告書というものを提出することが金融商品取引法で定められています。

事業年度が1年であれば、第1四半期報告書~第3四半期報告書を提出し、年度末に有価証券報告書(四半期報告書よりも詳細なもの)を提出します。

では、17ヶ月決算になった場合はどうなるかというと、

第1四半期報告書(4-6月期)

第2四半期報告書(7-9月期)

第3四半期報告書(10-12月期)

第4四半期報告書(1-3月期)

第5四半期報告書(4-6月期)

有価証券報告書(2019年4月~2020年8月)

 

通常は作成しない第4四半期報告書、第5四半期報告書が出てきます!

第4、第5四半期報告書の記載内容はどうなるかというと、第1四半期、第3四半期では記載の省略が認められていたキャッシュ・フロー計算書などが記載対象になったりします。また、前事業年度との比較情報をどのように記載するかなども検討が必要になってきます。

 

おわりに

事業年度の変更というトピックで財務経理の実務をご紹介しました。

この手の話はあまり表に出てこないので、この記事が少しでも実務担当者の方の参考になれば幸いです。