クラウドロガーを利用した可用性の高いシステムの構築

弊社ではモバイル回線とクラウドロガーを組み合わせて様々なサービスを提供しております。
モバイル回線を使用することで、遠く離れた場所から遠隔で端末を操作することや数㎞離れた端末間でお互いを制御するようなシステムの構築も可能となります。

その一方でキャリアの回線網の障害や端末設置場所の電波状況等の様々な要因により通信が不通になるケースも発生し得るため、遅延の発生が許容できないシステムにおいて問題となる場合があります。

本ブログでは、モバイル回線下で即時性が必要な案件に対して可用性の高いシステムを構築する一例として、弊社で担当したシステムをご紹介します。

システム要件概要

システムの要件概要は以下のようになります。
車両の接近を検知し作業者へ即時に通知することで、作業者の安全を確保するシステムの構築となります。

①車両の接近を警報灯により作業者へ通知
②車両の接近はセンサで検知
③センサは警報灯から離れた場所に設置
④車両は高速で接近するため、検知後に即時警報灯への通知が必要

センサと警報灯が離れていることから、センサの入力をトリガに警報灯を遠隔で制御する必要があります。
センサからの入力、警報灯のオン/オフはそれぞれ接点入力、出力経由となります。

課題

上記要件を満たすため、弊社クラウドロガーLTEを使用しました。
https://www.ecomott.co.jp/product/cloudloggerlte/
クラウドロガーLTEは接点入出力を搭載しており、LTE回線経由で接点伝送が行えます。
また、LTE回線を使用すれば通常は接点転送は1秒未満で可能なため、本案件ではクラウドロガーLTEの使用が最適です。

しかし、以下のような様々な要因によりセンサからの通知が不通になるケースが考えられます。
本案件のように即時性が必要なシステムにおいては通信障害は致命的となります。

①クラウドロガーのアンテナ障害
②キャリア回線網の障害
③クラウドロガーの故障

構築したシステム

上記課題に対してそれぞれ以下のように対策を行いました。

①端末の冗長化
②キャリアの冗長化
③故障を知らせるための死活監視機能
④稼働状態をクラウドへ記録

①端末の冗長化

通信を行う端末が1つの場合、アンテナの破損等によって通信ができなくなる可能性があります。

対策として端末を2台構成とする冗長化を行い可用性を高めることにしました。
一方の端末が通信できない状態が発生しても、もう一方の端末がバックアップとして働き、別ルートでの通信を確保します。

具体的な構成としては、弊社のクラウドロガーはLANポートを搭載しているので、端末をLANで接続して2台構成としています。
センサの状態をバックアップ端末に通知し、バックアップ端末からも対向モバイル回線経由で接点伝送を行うようにしています。

今回のシステムでは冗長化用の端末にはクラウドロガーLTE(Cat1)を使用しました。
https://www.ecomott.co.jp/product/cloudloggerlte-cat1/

②キャリアの冗長化

ニュース等でたびたび取り上げられることもありますが、モバイル回線においても様々な要因により障害が発生し通信ができなくなる場合があります。

この対策として冗長化した端末それぞれで異なる通信キャリアを使用するようにしました。
これにより、一方の通信回線で障害が発生した場合でも、もう一方の回線によりバックアップが可能となります。

③故障を知らせるための死活監視機能

①、②の対策によってシステムの可用性を高めていますが、両端末の故障等、通信が行えない最悪のケースについても考える必要があります。
本案件においては車両の接近を警報灯側へ通知できなくなっているため、作業者へ異常発生を知知らせなくてはなりません。

しかし、このような状態ではそもそも通信ができないため、異常発生を知らせる情報を送ることができません。

そこで、通信異常が発生した際にそのことを知らせるデータを送るのではなく、通信正常時に定期的にお互いでデータを送信するようにし、それが途絶えた時点で障害が発生したと判断する仕組み(死活監視機能)を取り入れました。
死活監視機能により通信が発生できない状況を作業者へ通知することで、異常発生時に作業者の避難を行えるようにし、安全を担保することができます。

④稼働状態をクラウドへ記録

各端末の状態は弊社クラウドシステムのFASTIOへ通知されます。

以下は警報灯側のクラウドロガーのFASTIO画面の例となります。
赤枠で囲った部分は対向端末の死活監視状態を示します。この例では1分間に受信できた回数や欠損した回数も表示しています。
青枠で囲った部分はセンサ側端末からの接点伝送状態、緑枠で囲った部分は伝送にかかった時間を示しています。

端末状態をクラウド上に保存することで異常発生時等の記録を遠隔で確認が可能となります。また、キャリアごとの通信時間の調査等も行うことができます。

おわりに

本ブログではモバイル回線下での安定性の高いシステム構築についてご紹介させていただきました。
弊社のクラウドロガーはアナログ入力や接点入力、RS232C等のインターフェースを搭載していますので、様々なケースにおいて活用することが可能です。
今後もクラウドロガーを利用して様々な案件に貢献してきたいと思います。