人工知能

化学プラントの運転改善にデジタルツインはどう役立つのか

 

こんにちは。AX研究室のRobert Hubaczです。

もし重要設備の異常を、停止や故障が起こる前の段階で把握できるとしたら——運転や保全の進め方は大きく変わるはずです。
ここで想定しているのは、定期点検の現場で偶然異常が見つかる、という話ではありません。日常的に収集される運転データをもとに、システム側が変化の兆候を継続的に捉えていく、というアプローチです。
こうした取り組みは、すでに多くの産業プラントで実用化が進んでいます。そして、それを支える中核技術の一つが「デジタルツイン」です。化学業界においても、安全性・効率性・信頼性を高める手段として、デジタルツインへの関心が急速に高まっています。
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Physics-Informed Neural Networks における再学習を減らす方法

こんにちは。AX研究室のRobert Hubaczです。物理法則を考慮したPINNモデルの学習を象徴するイラスト。
Physics-Informed Neural Networks(PINN)は、物理現象の問題を解くために用いられるニューラルネットワークの一種です。機械学習と物理方程式を組み合わせることで、ネットワークはデータだけでなく、物理法則からも学習します。
このため、PINNは利用できるデータが少ないデータでも精度よく学習できる場合があります。また、物理法則に反するような不自然な結果を出しにくいという利点もあります。
しかし、PINNには重要な制約もあります。まず、PINNの学習には時間がかかることがあります。さらに、従来型のPINNは、問題の物理パラメータが変化すると、通常は学習し直さなければなりません。ここでいう物理パラメータとは、速度、温度、濃度、あるいは問題を解析する領域の大きさのような量を指します。言い換えると、あるパラメータ条件で学習したPINNは、別のパラメータ条件に対する解をそのまま予測することは一般にはできません。

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WindsorMLのデータを用いた PINN による自動車周りの流れのシミュレーション

こんにちは!AX研究室のロベルト・フバチです。
近年、機械学習を流体力学の問題に応用する研究が注目を集めています。
その中でもPhysics-Informed Neural Networks(PINN)は、データに基づく手法と物理法則を組み合わせる点が大きな特徴であり、少量のデータでも物理現象を再現できる可能性を持っています。PINNの概要については、以前の投稿の一つで紹介いるのでそちらをご覧ください。

本ブログでは、公開されているCFDデータセットWindsorML(Ashton et al., 2024)を用いて、自動車周りの乱流空気流れのシミュレーションを行った事例を紹介します。対象は、WindsorMLデータセットに含まれる多数のシミュレーションケースの一つであるrun_0ケースです。
WindsorMLは、自動車空力を高精度に解析することを目的として構築された大規模かつ高品質なデータセットですが、その規模の大きさから、すべてのデータをそのまま利用することは実際には容易ではありません。

そこで本検討では、WindsorMLデータのごく一部のみを使用した場合に、PINNモデルがどの程度流れ場を再現できるのかを検証しました。元データは約2億点ですが、ベースライン用のデータとして約200万点(約1%)を抽出し、PINNの学習にはさらに少量の50,000点(約0.025%)を用いました。

この記事で分かること:

  • 約2億点のデータセットに対して、学習点50,000点(約0.025%)という極少データでも、PINNで流れ場をどこまで再現できるか

  • 限られた観測点で学習した場合に、再現しやすい領域/誤差が出やすい領域がどこに現れるか

  • 少量データ学習を前提にしたときの、(本記事で用いた)学習設定・前処理が結果にどう影響し得るか

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コルモゴロフ・アーノルド・ネットワークの紹介

こちらはAX研究室のロベルト・フバチです。この投稿では、比較的新しい種類のニューラルネットワークである コルモゴロフ・アーノルド・ネットワーク(Kolmogorov-Arnold Network, KAN) について紹介します。 その名前はコルモゴロフ・アーノルド表現定理に由来しており、この定理は「任意の多変数関数は1変数関数の和として表現できる」と述べています。
これはどういう意味でしょうか? たとえ非常に複雑な数学的関係でも、より単純な部分に分解することが可能です。 その結果、理解しやすくなり、処理も容易になります。 そのため、科学者たちは長年この定理に関心を持ち、ニューラルネットワークへの応用を模索してきました。しかし、満足のいく結果を得ることはできませんでした。
転機が訪れたのは2024年4月のことです。この定理を利用したニューラルネットワークの学習方法を説明する論文が発表されました[1]。 それ以来、多くの研究チームがコルモゴロフ・アーノルド・ネットワークに関する研究を発表し始めました [2]。
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データ収集と著作権法

データは著作権法で守られています。

AI構築する際、何をおいても必要なのはデータです。データがない場合、インターネット上のデータ(画像とか文章とか)を利用する場合も結構あるのではないでしょうか?

インターネット上にあるからと言って自由に使えるわけではありません。これらのルールを定めている法律が著作権法です。
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