過去の自分に留守番を頼む ~Home Assistant 「Presence Simulation」の設定と活用法~


こんにちは!
SJC共同開発推進室の鈴木です。
定期的にHome Assistantの記事をご紹介させていただいておりますが、今回も引き続き、Home Assistantをテーマに、その活用事例をご紹介します。

今回は、「防犯・セキュリティ」に焦点を当て、長期間家を空ける際に、あたかも家に誰かがいるかのように振る舞うことで家を守る、「Presence Simulation」という機能をご紹介します。

過去記事は以下になります。Home Assistantの概要、環境構築、活用事例をご紹介しておりますので、よろしければご確認ください。
スマートホームを次のレベルへ:Home Assistant のご紹介(1)
スマートホームを次のレベルへ:Home Assistant のご紹介(2)
スマートホームを次のレベルへ:Home Assistant のご紹介(3)

目次

1.Presence Simulationとは

まず、「Presence Simulation」とはHome Assistantが自動的に記録している過去の状態履歴(スイッチON、OFFなど)を参照し、同じ時間帯の状態を現在の家で再現することができる機能です。

Home Assistantでは、以下のように、過去の生活履歴をデータベースに保存しております。

例えば、11月のある平日

という生活履歴があった場合、「Presence Simulation」を起動すると、12月のある日を対象にして、家を留守にしていても、その日の同時刻に同じ状態を再現することができます。

既存で広く利用されている事例としては、市販のタイマーコンセントを使って「毎日19時に照明をON、22時にOFF」といった設定をするものはありますが、本設定はタイマーではなく、シナリオなども事前に作る必要なく、AIなどを活用することもない、過去の自分の行動を、そのまま再生するという非常にシンプルな機能です。

2.「HACS」について

今回の「Presence Simulation」は、Home Assistantの標準機能ではなく、有志の方が開発した拡張機能です。これを利用するために欠かせないのが「HACS (Home Assistant Community Store)」です。

Home Assistantには、「アドオンストア」という公式が提供する「アドオン」がありますが、これに加えて、世界中の開発者が作成した便利な機能(カスタムコンポーネント)を一括管理できるのが「HACS」です。イメージとしては、Home Assistantを本格的に使うための「アプリストア」です。

HACS」を有効にすることで、今回のような「Presence Simulation」といった公式には採用されていない高度な自動化ロジックをインストールできるようになります。

HACS」のインストール手順に関しては、少し長くなるため省略させていただきます。公式の以下の手順書をご確認ください。
ダウンロード手順
初期設定

今回は、この「HACS」経由で公開されている「Presence Simulation」( 詳細:slashback100/presence_simulation )というインテグレーションを使用しています。

3.Presence Simulationのインストールと設定

Presence Simulation」のインストールと設定に関してご紹介します。

3-1.Presence Simulationのインストール

  • Home Assistantの左メニューから「HACS」を押下し、検索窓に「Presence Simulation」と入力し、ダウンロードします。

  • ダウンロードが完了したら、一度Home Assistantを再起動します。再起動後、「設定」→「デバイスとサービス」を開き、「統合を追加」ボタンを押下します。 検索窓で「Presence Simulation」を検索し、選択します。

  • Presence Simulation」を選択すると、以下の設定画面が表示されます。

この設定を行うことで、Home Assistant上に「Presence Simulation」を起動できるスイッチが生成されます。外出時にこのスイッチをONにするだけで、家中の照明やテレビが、過去の自分と同じ動きを始めます。(※ 各設定項目の詳細は3-2.Presence Simulationの設定に記載しております。)

※注意点 シミュレーション対象には「照明」や「テレビ」などの機器を選んでください。 電気ストーブ、コタツ、アイロンなどが接続されたスマートプラグなどは、絶対に含めないようにしましょう。 「過去の自分がストーブをつけていた」としても、無人の家でそれが再現されると火災のリスクになります。

3-2.Presence Simulationの設定

設定項目の詳細に関して、以下の表でご紹介します。

設定項目 機能の概要 ポイント・例
1. The name of the presence simulation switch 作成されるスイッチの表示名 Holiday Presence など。この名前が switch.presence_simulation 等のエンティティIDになります。
2. Entity or group of entities 操作対象のデバイス指定 ライトやスイッチ、グループを指定。グループ内の各デバイスを個別の履歴に基づいて再現します。
3. Labels HA内の管理用ラベル 機能的な影響はありませんが、securityvacation など、後から検索・分類しやすくするためのラベルです。
4. Delta (days) 参照する過去の日数 何日前の履歴を再現するか。7なら1週間前、30なら1ヶ月前の同時刻の動きをシミュレーションします。
5. Refresh interval 更新・停止確認の間隔 デフォルトは30秒。シミュレーションの停止を検知する頻度です。基本はそのままでOK(小さすぎると負荷増)。
6. Restore state after simulation 終了時の状態復元 ONにすると、シミュレーション停止時に「開始前の状態」へ戻します。留守番用途ではONが推奨です。
7. Add a random time for switching entities ランダムな時間差 履歴に対して「揺らぎ」を加えます。毎日同じ時間に点灯するのを防ぎ、人間らしい動きに見えます。
8. Consider Unavailable status as Off 不明状態の扱い 通信断などで Unavailable になったデバイスを Off とみなします。Wi-Fi機器が多い環境でONがおすすめです。
9. Brightness to be used if light allows the feature 明るさの固定指定 0なら履歴通りの明るさ。1〜100を指定すると履歴を無視して固定の明るさで点灯させます。

4.活用するメリット

この機能を活用することで、以下のメリットがあると感じました。

外出中も実際に人がいるかのように振舞ってくれる

長期の旅行や出張中、防犯対策として「タイマーコンセント」を利用されている方は多いかもしれません。指定した時間に電気がつき、決まった時間に消える。一見すると有効な手段に思えますが、実はここには大きな落とし穴があります。
空き巣にとって、毎日1分の狂いもなく繰り返されるON/OFFは、不自然に見えてしまう可能性があります。

従来のタイマーとの決定的な違いは、そこに人間の生活感があるかどうかです。実際に家で過ごしている時の振る舞いは、決してプログラムされたように正確ではありません。
深夜、ふと目が覚めてトイレに立った時の一瞬の点灯、リビングを消灯してから、寝室の明かりがつくまでの絶妙なタイムラグ、日によって数分ずつずれる就寝時間。こうした「設定するには面倒すぎる不規則な動き」こそが、外から見た時に「あ、誰かいるな」と感じさせてくれます。

ずぼらこそが最強の防犯になる

旅行の荷造りで忙しい時に、タイマーで時刻設定をする必要はありません。 このシステムの優れている点は、「普通に生活すること」自体が、最強の防犯スクリプトの作成作業になっているという点です。
Home Assistantは、意識せずとも日々の生活をするだけで、行動データを蓄積し続けています。出発前にスイッチを押すだけで、直近のデータを読み込み、完璧に再現してくれます。 努力ゼロで、セキュリティレベルは最大化する。これこそがスマートホームの真骨頂です。

まとめ

今回は、Home Assistantと「HACS」を活用した「Presence Simulation」による、空き巣対策をご紹介させていただきました。 IoTは単に生活を便利にするだけでなく、こうした「過去のデータ」を活用することで、セキュリティの質も向上させることができます。「家に誰もいないけれど、誰かの気配がある」。少し奇妙ですが、とても頼りになる技術も、Home Assistantなら簡単に実装可能です。
個人的に使っていて面白いと感じたのは、「過去の自分の行動」を資産として使えるというところで、ログを蓄積していって、そのまま再利用できるIoTの良さを改めて実感しました。今後も引き続きHome Assistantの様々な機能を深堀して、ご紹介していきたいと思います。

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